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論文掲載のお知らせ(『Internal Medicine』61巻2号)
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2022年1月、『Internal Medicine』61巻2号におきまして、医療法人社団悠翔会 悠翔会在宅クリニック品川の勤務医で、藤沢市民病院救命救急センター非常勤医師でもある井上淑恵の論文「Factors in Avoidable Emergency Visits for Ambulatory Care-sensitive Conditions among Older Patients Receiving Home Care in Japan: A Retrospective Study」が掲載されました。
「Ambulatory care sensitive conditions(ACSCs)」とは、適切なタイミングで効果的なケアを行えば、入院のリスクを減らせるような状態のことで、急性疾患(蜂窩織炎、脱水、尿路感染症など)、慢性疾患(COPD、喘息、うっ血性心不全、糖尿病合併症など)、予防できる疾患(インフルエンザ、肺炎、結核など)の3つに分類されます。主にプライマリ・ケアの有効性尺度として用いられています。
ACSCsについてのドイツの先行研究では、緊急入院の原因は「システム要因」「医療者側要因」「医学的要因」「患者側要因」「社会的要因」の5つに分類され、約41%は回避できる可能性があると報告されています。
在宅療養を行っている患者さんの救急搬送は、しばしば経験しますが、どうすればそれを防ぐことができるのかについては、これまで不明でした。
そこで、悠翔会在宅クリニック品川では、救急搬送した患者さんを対象に、「医学的要因」「医療者側要因」「患者側要因」「社会的要因」の4つに分けて理由を調べました(「システム要因」は当院には当てはまらないため除外しています)。
2年分のデータを調べたところ、搬送理由の約8割が患者側の「社会的要因」にあり、全体で約48%は緊急入院が回避できそうだということがわかりました。在宅療養の質が重要であることはもちろんですが、それ以外に、「在宅療養環境の整備」「家族や介護専門職へのエンパワメント」「地域全体の在宅療養支援力の強化」が必要であることがわかりました。
また、多変量解析では、患者さんへのACPの実施が入院回避の因子となっていたことから、ACPは必要であるという結論を出しました。
ACPはアドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning)の略称で、日本における愛称として厚生労働省が「人生会議」を選定し、市民への啓発を図っています。一般的には、人生の最終段階に向けた治療やケアの方法について、患者本人と家族と医療従事者が話し合いで決めるプロセスと定義され、厚労省や大学病院がパンフレットを作成しています。また、オンラインでも情報を検索することができます。
ACPは「在宅で行うもの」「病院で行うもの」「事前意思確認をとるもの」など、世の中に誤った解釈が広まっていることを危惧しています。
この論文が、「患者さん本人がどんな希望をもって、どうやって今後の人生を生き抜いていきたいか」を、患者さんと医療者や生活支援で関わる人たちとが話し合い、共有することの大切さを、多くの方に知っていただくエビデンスになればと思います。