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論文掲載のお知らせ(『geriatrics』)
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2022年3月25日、医療法人社団悠翔会訪問歯科診療部の歯科医師、若杉葉子の論文「Factors Affecting Hospitalization and Death of Older Patients Who Need Long-Term Care—The Necessity of the Support for Dysphagia in Home Dental Care」が、老年医学に関する科学雑誌『geriatrics』に掲載されました。
日本では訪問歯科診療の必要性は広まりつつあり、医科歯科連携や多職種連携の重要性も認識されていますが、予後評価のための歯科的なアセスメントの重要性については検討されていません。そこで今回、経口摂取をしていた高齢者239名を対象に3年間の前向き研究を行い、歯科的なアセスメントの結果が、要介護の高齢者の入院や死亡にどう影響するかを検討しました。
常食群と非常食群とに分け、年齢、栄養状態、ADL、嚥下機能、嚥下介入の有無を比較しました。また、1年後に食形態が維持できている群、低下群、改善群の3群間で、初診時と1年後の栄養状態とADLを比較し、さらに、3年間の入院と死亡に影響を及ぼす因子を検討しました。
その結果、栄養状態、嚥下機能、ADLは非常食群で低い傾向がみられました。また、全体の54.8%がDSS(摂食・嚥下障害の臨床的重症度分類)5以下でした。これらから、歯科介入により嚥下障害の早期把握ができる可能性があり、非常食群では嚥下機能の把握と栄養指導が望ましいと言えます。また、歯科介入により食形態と栄養状態が改善する可能性があり、歯科治療で終わらせず機能評価に基づいた食支援が重要であることも示唆されました。
3年間の追跡期間中に、53名が少なくとも1回の入院を経験していました。入院の有無で比較すると、ADL、食形態の変化、嚥下機能で有意差が認められ、比例ハザード分析(強制投入法)では食形態の変化で有意差が認められました。また、3年間の観察期間の間に55名が死亡しましたが、栄養状態、ADL、嚥下機能、食形態の変化、年齢で有意差が認められ、比例ハザード分析では食形態の変化で有意差が認められました。
食形態の変化は、入院や死亡のリスク因子です。歯科においてもリスクを予測しながら介入し、入院予防・急変予防へつなげることが必要です。